【4月20日は腰痛ゼロの日】目指せ!腰痛ゼロ 3者対談レポート2023

アシストスーツの窓口では、「4月20日は腰痛ゼロの日」を多くの方に知っていただき、職業性腰痛の発生をゼロに近付ける取組を進めています。

■腰痛ゼロの日とは・・・
「420(腰痛ゼロ)の会」代表の本坊隆博氏(日本カイロプラクティックドクター専門学院 名古屋校学院長)が制定。
日付は「腰(4)痛(2)ゼロ(0)」と読む語呂合わせからきており、腰痛に悩んでいる人をゼロにしたいとの想いが込められています。

目指せ!腰痛ゼロ企画:4月20日に向けて対談を実施いたしました。

腰痛ゼロの日制定者 × 建設業界の現場支援担当者 × アシストスーツアドバイザー
3者が集まり腰痛ゼロに向けての対談を行いました。

協力:ユーピーアール株式会社

本坊隆博

腰痛ゼロの日制定者

日本カイロプラクティックドクター専門学院 名古屋校学院長


整体院の経営とカイロプラクティックの専門学院の学院長を務めている。父親の腰痛がカイロプラクティックにより劇的に回復したことから、カイロプラクティックの研究を始めた。

清水建設株式会社 
建築総本部 生産技術本部 生産技術開発センター デジタルマネジメントグループ
工学博士


マッスルスーツの研究開発を担当。建設業界へ入社後、アシストスーツやドローン導入などの現場支援業務に従事。現在はRXコンソーシアムへ参加しアシストスーツWGリーダーを務めている。

村松慶紀

逢󠄀坂大輔

アシストスーツアドバイザー

株式会社シーエフロボタス 代表取締役
NPO法人ロボットビジネス支援機構(RobiZy)アドバイザー
理学療法士・作業管理士


当サイト創設者。「はたらく人の腰をまもる」をコンセプトに作業負担の軽減を支援している。

≪対談内容≫


逢󠄀坂

「腰痛ゼロの日」を制定したきっかけは何ですか?


本坊

カイロプラクティックで父の腰痛が劇的に良くなり、そこから興味をもち勉強を始め、カイロプラクティックをもっと世の中に普及させて、腰痛に対して皆さんにもっと認識を持ってほしいという想いから、この「腰痛ゼロの日」をつくりました。


逢󠄀坂

御家族への深い想いからこの日が作られたのですね。
残念ながら腰痛は減っていない印象です。腰痛を抱えながら仕事をしている人たちや、労働災害のような業務上の怪我などに起因する腰痛、仕事で腰がダメになったという人もいて、声高らかに「腰痛いんです!」とはなかなか言えずに我慢している人も多いようですね。


本坊

私は30年以上カイロプラクティックの仕事をしていますが、腰痛は減っていません。
腰痛になる条件は、姿勢・筋量不足なんですね。つまり身体のパフォーマンス低下です。
日本は高齢化が進んでいて、筋量も落ちるし、パフォーマンスは下がってます。
筋肉は活動させないとダメで、身体のパフォーマンスが下がっているせいで腰痛が減らないんです。日本全体が高齢化にシフトしている以上、今後もますます腰痛は増えていくと思います。


逢󠄀坂

人手不足が深刻な社会問題になっているので、シニアにはもっと長く働いてもらえる環境を整えていくことが必要になってきていますね。一方で、若手も働く環境によって疲弊していくのではと、とても心配しています。
村松さんは、大手ゼネコンが集まる建設RXコンソーシアムのアシストスーツ(以下ASと表記) ワーキンググループで、リーダーを勤めているそうですが、建設業界での腰痛状況はどうですか?


村松

建設業は、時間外労働の罰則付き上限規制がスタートする2024年問題と団塊世代が75歳以上になる2025年問題を抱えていて、今後の労働力不足がかなり深刻です。
そのため、現場の生産性をどう上げるかが課題になっています。
実際の現場を見てみると、若い人もいますが、年配の方が圧倒的に多く、衣食住の「住」の担い手がいないということでもあり、これは今後かなり深刻な問題となっていきます。
理由は、やはり3Kです。建設業は腰痛が常習化しているので、「腰が痛いのが普通」になってしまっています。


逢󠄀坂

なるほど、建設業界もかなり大変な状況なのですね。


村松

建設業では、ほぼ全員が腰が痛いと言っても過言ではないほど、腰痛が当たり前になっています。
ハウスメーカーのように、工場で作って現場で組み立てるやり方であれば機械化やロボット化が進むのですが、 ビルを建てるとなると、一品物を作ることになるので、どうしても人手による作業が必要になってきます。
腰痛で現場仕事ができなくなって、事務作業とか他の職種に変えている方もたくさんいます。
大切なのは、『健康寿命をいかに長く延ばしていくか』であり、その解決策を模索するため、 建設RXコンソーシアム内にASワーキンググループを立ち上げ、建設業全体で腰痛の軽減や予防ができないか検討しています。
介護の場合、人と人が密着するのでロボット化が意外としやすく進んでますが、 建設業では、整備されていない施工中の作業環境や、人が前提での複雑な作業など、 ロボット技術があったとしても、導入はそう簡単には進みません。
そのため、ASはかなり重要になってくると思っています。


逢󠄀坂

本坊先生のお話の通り、パフォーマンスが下がってきた方をどう補うか、という点と、 すでに腰痛を持っている方は何らかの器具に頼らなければならないという、二つの側面があると思います。
怪我の予防、疲弊を防ぐという意味合いで、ASを使うというのはかなり大事かなと思います。


村松

たしかにASは大切なツールですが、建設業では市販のものがすぐ使えるわけでもないのです。
建設業は雇用体制が特殊で、 発注者、大手ゼネコン、1次請け、2次・3次と、職人を抱えてる会社が複数社あり、一人親方も多くいます。
例えば、大きなビル建設の場合、毎日5000人くらいが現場で働いているのですが、毎日同じ人ではなく、 入れ代わり立ち代わりいろいろな会社の人が入ってくるので、ASを着て作業してください、という指導も管理もなかなかできません。
さらに、ASを装着して作業すれば腰痛予防になると伝えても、身体に自信のある方が多いので、 装着することによる経済的なメリットがはっきり理解できないと、装着したがらないのです。
ASの装着によって動きにくくなって作業量が減るので使いたくない、と考える若い人はかなり多い印象です。 逆に、50・60歳代は、すでに腰が痛くて作業効率が落ちているので、装着することによって普通に働けることが実感できると、 「自分からつけたい」って思ってもらえる方が多いです。 一方で、若い人は「腰痛の予防になる」といっても、「自分は腰痛になってないからわからない、つけたくない」となってしまいます。
こういう若い人に使ってもらうには、なかなか難しいところがあります。


逢󠄀坂

業界特有のお話が聞けて大変参考になりました。
となると、別の対策をという話になるかと思います。
建設業では、仕事前に準備体操をしているイメージがあり、とても良い取り組みと思っていますが、腰痛には効果はありませんか?


村松

準備体操は、動的負荷としてはとてもいいのですが、 腰痛になる作業をそもそもさせないとか、作業のやり方を改善するなども考えていく必要があります。
建設RXコンソーシアムのASワーキンググループでは、ASで作業中に腰痛などの身体にかかる負担を軽減することを目的に、 自分たちの抱えてる職人だけでなく業界全体として改善していきましょう、という方向で動いています。


逢󠄀坂

なるほど、それが建設RXコンソーシアムの役割なんですね。 それにしても、どうすると腰痛になるかという、腰痛に対する知識・リテラシーが必要ですね。
本坊先生は、リテラシーについてどう考えていますか?


本坊

筋肉は活動させないとダメになるので、例えば、準備体操は本当にいいものだと思いますし、 腰痛にならない動作や作業の仕方、姿勢が非常に重要だと考えています。
ところで、建設業界には、こうやったら効率がいいとか、こうやったら身体を壊さないよ、とか指導する方はいるのですか?


村松

墜落制止用器具の未使用など、命の危険や大怪我につながる危険行動の指摘・指導・教育にはかなり力を入れていますが、 仕事をやる際の姿勢などの指導は正直少ないです。


逢󠄀坂

ということは、本坊先生が仰るような作業の姿勢に対する教育はあまりされていない、という感じでしょうか。


村松

各社、職人さんには長く働いてもらいたいので、「こうやるといいよ」と話すレベルだと思います。 現場に来た職人さんに対して、「こういう姿勢でやって」と言うことは、 仕事のやり方に必要以上に口を出すことになるので、元請け側からはほとんど言わないと思います。
仮に、こちらからの指示で作業時の姿勢まで強要したとなると、それが理由で、 「本来10出来たはずが、8しか出来ませんでした」を、元請けとして受け入れる覚悟をしての発言になるかと思います。


逢󠄀坂

ということは、無理な姿勢でも作業スピードが落ちないようなASがあるといいな、ということでしょうか?


村松

今の作業のやり方を変えずにASを使用したら、腰が楽になる、という考え方です。
逆に言うと、ASを装着したまま今の作業のやり方ができないと、なかなか受け入れてもらえないです。


逢󠄀坂

いまの作業を邪魔しないようなASがあればうれしい、ということですね。


村松

建設RXコンソーシアムのASワーキンググループの役割は、ASのメーカーに対して、 「建設現場の現状を踏まえて、このような条件では現場に受け入れてもらいにくいですよ」 「逆に、こういう前提のものであれば、受け入れてもらえますよ」と、発信することです。
今あるものに対しても、「こうしたら受け入れてもらえますよ」というのも合わせて発信出来たらなと思ってます。


逢󠄀坂

ASワーキンググループの取組みは、現場からの要望をメーカーにダイレクトに伝えられる良い機会になりますね。
他には、働く方の腰痛知識の向上が必要と思うのですが、 そのためにも、『腰痛ゼロの日』をもっと知ってもらえればと思っています。
本坊先生、一般の方向けの腰痛知識やリテラシー向上について、何かお考えがありますか?


本坊

職人さんも患者さんも、どういうことをすれば腰を痛めるか、どういう作業であれば効率が良くなるとか、 そういう知識を教育してあげるのが重要かなと思います。
知ってるのと知らないのでは全然違うと思うんです。
私も治療の際に、「どういうケアをしたらいいか」とか、「どういうことに気をつけて動作したらいいか」とか、 「あなたのお仕事だとこういうところが原因で腰痛が起きますから、この点に気をつけてください」などと指導することが多いです。
指導・教育して、本人たちが気をつけてくれれば一番いいと思います。
いまできるところはその辺りかなと思います。 腰痛に対する知識はあまりないと思うので、指導者側が積極的に指導・教育していく必要があると思います。


逢󠄀坂

たしかに、どの産業においても、作業現場ごとに「腰痛教室」があるといいですね。
あとは、根本的に、「腰痛になったらどうなるよ」とか「こうしないと予防できないよ」とか、 皆さんがある程度の知識があれば、腰痛患者は減っていくと思います。


村松

建設現場だと、「多くの職人さんが腰痛を抱えている」という感覚がありますが、 若い人たちは、年配の方が腰がつらそうなのを見ているので、腰を痛めたらどうなるかよくわかっているはずなんです。 こうしたら腰も痛めにくいし作業効率も落ちない、というようなソリューションを提案できればいいんですが、 そこまでできていないのが現状です。


逢󠄀坂

聞けば聞くほど、これからは、「腰を守る風潮の方がかっこいい」という方向にもっていきたいですね。仕事で 「腰を痛めてる自慢」は昭和時代からの良くない風潮なので、是正していかなければならないですね。


本坊

建設業界においてAS導入の一番の問題は生産性ということでしょうか? 親和性・機能性はどうでしょう? ASに求めるものって何ですか?


村松

ASと聞くと、パワーがアップして、出来ることが増えて、生産性が上がると思われるんです。
もちろん、本当はそういうものがいいのですが、実際はそうではないですよね。
これまでの活動では、「ASは生産性が上がるものではなく、身体の負担が軽減できて、長期的にみると長く働けるようになる」 という説明をしています。
清水建設内や、建設RXコンソーシアムに参加していただいてる企業さんにも、だいぶ浸透してきたかなと思います。
導入できるかどうかのハードルは、今までと同じ動きができるかが建設業の中でASを使う第一歩になります。
あちこち動き回っていろいろな場所でいろいろな作業をするので、出っ張りとかあるとぶつかったりしますし、 暑い寒いというよりは普通の動きができないと、墜落したり、刺さったりして危ないので、 アシストされてるされてないに関わらず、作業環境への適応性が重要となります。


本坊

ASとフルハーネスの一体型も労働環境とマッチするということで、ユーピーアール㈱さんと共同開発して発表したんですよね。


村松

そうですね。


逢󠄀坂

これまでは、高所作業に適したASはなかったですよね。


村松

アクティブ型などのパワーが出るものは、それはそれで適用できる場所はあると思いますが、 建設現場の作業に関しては、サポーター型くらいのアシスト力の方が作業現場での親和性がとれて評判はいいですね。 装着したままでいられる方が受け入れられやすいです。


逢󠄀坂

なるほど。ということは、業種業界ごとに押さえておきたいポイントが結構違いますね。


村松

建設現場では、出っ張りが少ないものが求められていました。


本坊

今回は、フルハーネスとジョイントする、というものが出てきましたが、 他の業界でも、ASを、何かとジョイントしたり合体できるものが出てくるのかな、と期待してます。
これを活用することで、働ける年数は増えていくと思いますか?


村松

それは確実に増えると思います。 ASを着用して長く働ければ、より技術は上がり、業界としても熟練した人が増えていくのでとてもいいことです。


逢󠄀坂

農業の場合、ASを使うことで、頻繁に休まず作業を続けられるという観点から生産性が上がるという考え方もできますね。 これも業種によって違う、ということなのかなと思います。
介護も、夜間の体位変換や衣服交換、シーツ交換などを流れ作業で行う場合があるので、このように続けて作業するときに、 仕事がはかどるというメリットがあり、さらに腰の負担も減るので、2つのメリットがあるように思います。
ということは、各業界の方が、何を選べばいいのかわからないというのは、 どこにフォーカスして選べばいいのかわからない、ということなのかもしれないですね。
ASの説明時に、「パワーアップするものではない」と伝えると、結構落胆する方が多いのですが、 何十回も同じことをするのであれば、長期で見るとその分、筋肉や椎間板などにかかる負担は軽減しているんですよ、と 説明するようにしています。
身体への負担軽減と休む頻度が減るので作業がはかどりますよ、と説明しています。


村松

「生産性が上がる」というのも、どのような時間軸で見るかで意味が変わってくるんだと思います。 長期間の現場や農業・介護・工場であれば、休憩時間1日10分の削減が、1週間で1時間、それが2年3年と続いていきますので、 積み重ねで生産性が上がると言いやすくなります。 業界によって、評価の切り口によって生産性の考え方も変わってくると思います。


逢󠄀坂

ASに限らず、「腰の負担軽減になるツールの使用や対策は行っていこう」と発信し続けたいですね。


村松

ASであれば装着すればいいだけなので、今の作業をそんなに変えずにすぐにできる対策として有効だと思います。 ただ、本質的な問題は、その作業をなくすとか、人が作業しなくていい状態にしていくことが重要と思います。
ロボット化や自動化、やり方を根本的に変えるとか、いろいろあると思うのですけど、 それにはすごく時間がかかるので、ASを使えば手っ取り早く、今いる人たちを守れます。
将来の人たちを守るために、ASだけではなく、もっと他の施策、根本的な解決ややり方、意識を変えることなどについて 取り組んでいくということが、『腰痛ゼロ』に向けてやるべきこと、やっていかなければならないことだと思います。


本坊

ASも、もっとカテゴリーが増えるといいかもしれないですね。
アシスト力は弱いかもしれないけど親和性が高いものとか、親和性は低いけどアシスト力が強いとか、 いろんなカテゴリーの商品が選べるようになると、いろんな業種に合わせられるようになるのかなと思います。 その方が使いやすくなると思います。


逢󠄀坂

メーカーの開発だけでは現場にフィットしにくいようなので、建設RXコンソーシアムのASワーキンググループの取組みのように、 現場の方々に使ってもらってヒアリングして、さらにいいものができてくるというサイクルができるといいですよね。


村松

メーカーだけでもできないし、業界だけでもできないので、タッグを組んで取り組んでいくべきと思います。 その点、介護業界はかなり進んでいる方だと思います。 建設業は各社で少しづつ検討していたのですが、業界全体として建設RXコンソーシアムで動き始めたところです。 まずは、自分事として取り組み、そしてメーカーも巻き込んで、徐々に広めていくことが重要と思います。


逢󠄀坂

ASアドバイザーの立場で言うと、 ASを使ってもらった方が、開発の機会が増えていい製品に成長していくと期待しています。 いろんな方面から意見して、要件定義して、開発要求をしていく、というシステムがあるといいですね。


村松

ユーザが自分たちで評価して、判断して、選んで、購入できる環境づくりも必要だと思います。 例えば、ショッピングセンターとかで実際に手に取って試しやすくするなどです。


逢󠄀坂

今できる対策として、
1.ASを使ってみる。
2.作業負荷を減らす取り組みをする。
3.業種にあったASのラインナップを増やす。
4.パフォーマンスが下がらないよう身体を鍛える。
5.腰痛教育を広げる。

この5つを、業界とメーカーがタッグを組んで進めることで、個人の能力やリテラシーを上げることもできて、 作業環境も変えることができ、いろんな側面から『腰痛ゼロ』が達成できると思います。

高所作業にも適応できるアシストスーツはこちら

【RXコンソーシアムについてはこちら】

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