アシストスーツの問題点について考える。実際のところどうなの?

パワーアシストスーツの問題点とは?

アシストスーツの導入を検討されている方にとっては大変気になることでしょう。

ここでは、パワーアシストスーツ選びの参考になるよう、問題点と思われる内容を整理していきたいと思います。

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当サイトにもよくご相談をいただくのですが、導入検討段階のお客様が抱いているイメージは次のような内容が多いです。

  • 費用がかかる
  • そもそも装着することが煩わしい
  • 効果が懐疑的
  • 職場の全作業員に適応できない気がする

といった内容が多いです。

費用がかかる…

まず、費用がかかる という点については

現在主流のアシストスーツですが、
当社では次のように分類しています。

  • 動力なし・サポータータイプ
  • 動力なし・外骨格タイプ
  • 動力あり・外骨格タイプ

動力なし・サポータタイプは一着数万円~10万円程度の価格帯で販売されています。


動力なし・外骨格タイプは手に入れやすい価格帯のものも登場しています。一着5万円~50万円あたりというところが中心です。


動力あり・外骨格タイプについては、バッテリーを使用してモーターやセンサーで駆動するタイプになりますのでもう少しお値段が高くなります。
だいたい60万円後半から100万円ほどが主流です。

機能や耐久性の面でみてみると、

動力なし・サポータータイプは気軽に着用できるのが特徴ですがソフト素材やゴム部分で構成されているので耐久性の面では交換サイクルは早くなるだろうという特徴があります。


動力なし・外骨格タイプは、背面に背骨の代わりとなる支柱が入っていたり、空気圧式やガススプリングの動力でアシスト力を発揮するタイプになります。身体の余分な動きを抑えてくれたり、身体の動きに連動してアシストをしてくれます。しっかりとした設計をされていますので使用は年単位で考えてもらうことで問題ないかと思います。

動力あり・外骨格タイプは使用される部品が多くなるので価格も上昇してしまうのでしょう。その代わり、センサーで身体の動きを検知してモーターのアシストを発揮させますので、身体の動きに合わせたアシストが可能になっています。ロスなくアシストをしてくれると表現してよいかと思います。
こちらも数年単位での使用が前提とされています。

本体価格を月額換算して見てみましょう。

モーター式の動力ありタイプを例にみていきましょう。

モーター式(動力ありタイプ) 腰用アシスト
・税込本体価格657,800円を5年60ヶ月)使用すると仮定
・657,800÷60=10,963.333…
1ヶ月あたり約11,000円

月々の費用で見ると1万1千円ほどになります。
ここに月間の稼働日を計算していただくと日額費用が算出できますね。
本体購入価格としては65万円ほどと大きい買い物に見えるかもしれませんが、数年はしっかりと使用できる製品になりますので実際の費用負担はそんなに大きくないと思います。

また、金額だけでない費用対効果や導入効果についてはこちらの内容を参考にしてください。

次に、そもそも装着することが煩わしいということですが、確かにそうなのかもしれませんね。

装着することが…

これは、装着することで持ち上げ作業が楽になる!という考えに切り替えていきましょう。


とある研究では、背中に背負うものの重量は体重の10~15%以内の重さが望ましいといわれています。
体重70㎏の方であれば7~10㎏ほどの重さです。
動力あり・外骨格タイプのアシストスーツの重量は、3~5㎏までの製品が主流ですので背負う重さの指標としてはクリアしていると言えます。
もっとも、腰用のアシストスーツのユニット部分は腰の位置にあるのがほとんどですので、リュックサックのような肩ベルトにそんなに負荷がかかるというわけではありません。
ベルトが緩い状態であれば背負っている重量を感じるのですが、身体にしっかりと密着させることでアシストスーツの重さを感じることは少なくなります
ただ、これまでの作業では何も背負うこと無く作業をしていたので、アシストスーツを「装着する」ということに抵抗感を感じる方もいらっしゃるでしょう。

いまから40年ほど前は、ヘルメットをかぶらずにバイクに乗ることが当たり前でした。
1986年に原付を含むすべてのバイクに乗車する際のヘルメット着用が義務化されたのです。

いま、ヘルメットをかぶらずにバイクに乗ることなんて、考えただけでも恐ろしいですよね。
でもそれが普通だったんです。

これは、腰を守るアシストスーツにも当てはまるのではないかと思っています。

腰を守ることをせずに重量物を運搬することで腰を痛める危険性が高くなることは良く知られています。
腰痛による自身への損失や、所属する会社の損失をできるだけ防いでいただきたいと願っています。

アシストスーツを装着して持ち上げ作業を行う作業環境が当たり前になるように、自分の身体を守るためにもアシストスーツを装着する煩わしさ感じて欲しくないと思います。

長く装着することって、なんか不安…

アシストスーツ装着の問題点については、いまのところ特にレポートされているものは見つけられていません。

ただ、産業医や整形外科医からは…

  • アシストスーツに助けられることで間違った持ち上げ方をする人もいる
  • その結果、間違った持ち上げ方でアシストスーツを着ていない場面(仕事・家庭)で無理して痛める
  • 持ち上げ動作の正しいポジションをまず身につける必要がある

といった心配の声も聞かれています。

アシストスーツ装着の有無にかかわらず、正しい持ち上げ姿勢や動作を理解しておくことが必要です。

また、海外の研究では、

アシストスーツが筋骨格系にもたらすメリットは、作業者が他の事を考える事によって打ち消される可能性がある。
「それは本当に悪いパートナーと踊るようなものです」

~オハイオ州立大学・テキサスA&M大学~

という報告があります。
<参照>https://www.safetyandhealthmagazine.com/articles/21521-like-dancing-with-a-really-bad-partner-exoskeletons-can-confuse-the-brain-researchers-say

これは、持ち上げ持ち下げ動作の最中に暗算をする課題を与えて、暗算をしている時としていない時の腰にかかる力を測定したリサーチです。

つまり、作業をしながら暗算をするという、二重課題といわれる状況です。
二重課題の状況下では、身体とアシストスーツの一体となった動きにズレが生じていたということです。

脳が計算問題を考えながらも、持ち上げ動作を実行するための筋肉の動員する方法を混乱させた」

ということのようです。

報告者は、「ある程度の知性と仕事の内容をある程度理解した外骨格を使用する必要があります。」と語っています。

二重課題だと動きの追随に脳がついてこない状況になっていると考えることができます。
アシストスーツの習熟度、すなわち慣れがないと、この状況は顕著に出てくるのかもしれません。
そして、作業中は他の事はあまり考えず、集中して作業をする方が良いですね。

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シーエフロボタスでは、これまでのアシストスーツ導入支援の経験上、
いきなり装着デモをすることはおすすめしていません。
どのような作業内容でアシストスーツを使用し、解消したい課題についてのアウトカムを設定して導入から活用・定着までをスムーズに進めていけるように支援するスタイルをおすすめしています。

アシストスーツをしっかりと使いこなして、そこから得られる作業者のメリット、事業所のメリット、法人全体へのメリットをしっかりとビジョン化してアシストスーツの選定から導入計画の立案、活用から定着までをすすめていきましょう。

効果が懐疑的…

現在各社から効果実証のデータが公開されています。
例えば、ユーピーアール社から公表されている製品効果については、

【サポートジャケットEp+ROBO】(動力あり・腰用アシスト)
1.装着の有無による筋活動(筋電図)の変化
※健常成人男性5名、床と高さ70㎝の台の間を重さ10㎏の荷物の上げ下ろし動作で検証

脊柱起立筋の筋活動:ROBO着用にて最大42.8%(平均29.8±9.8%)減少

2.腰椎に加わる圧力の測定値
※健常成人男性5名、荷物の上げ下ろし動作時における前かがみ(体幹前傾)角度を測定し、第4第5腰椎への圧迫力をモデル計算

床から持ち上げる動作の前傾角度:非装着時69.2度 ROBO着用時52.2度 
⇒ 17.0度減少
⇒ 腰椎の椎間板にかかる瞬間的な負荷圧力負担は2.5㎏減少と計算。

机から床に下ろす動作の前傾角度:非装着時68.0度 ROBO着用時54.4度
⇒ 13.6度減少
⇒ 腰椎の椎間板にかかる瞬間的な負荷圧力負担は1.8㎏減少と計算。

【サポートジャケットBb+PROⅡ】(動力なし・外骨格)
1.腰椎椎間板に加わる圧力測定値
※10㎏の荷物を床からテーブルに持ち上げる動作にて測定

未装着    PROⅡ装着  
床から持ち上げる際の前傾角度61.6度52.4度
机から床に下ろす際の前傾角度61.0度52.0度

Bb+PROⅡ装着で改善される体幹前傾角度:9.0~9.2度減少
⇒ 瞬間的な負荷圧力の負担が10.6~10.7㎏減少

※検証方法:健常成人男性5名、170㎝、体重60kgに重さ10kgの荷物の上げ下ろし動作における前かがみ(体幹前傾)角度を測定し、腰椎4/5への圧迫力をモデル計算した。

動力があるタイプと動力がないタイプでも、筋活動の軽減が期待できたり体幹前傾角度を抑えることで椎間板にかかる負担を軽減することが期待できます。

レイボ社から発表されているデータは、

【レイボエクソスケルトン】(動力なし・外骨格)
※臨床評価による負担軽減率 
~オランダ応用科学研究機構およびアムステルダム自由大学の臨床評価~

 僧帽筋群 44~50%軽減
 脊柱起立筋群 最長筋35~37%軽減
 腰腸・胸腸・頚腸肋筋38~44%軽減

※レイボ装着有無による差 
~イギリスG’sGlobal社提携農園での農作業にて検証~ 試験環境温度約14℃

平均酸素摂取量最高酸素摂取量最大酸素摂取量平均心拍数最大心拍数
レイボ未装着14.2623.9845.50131178
レイボ装着13.2723.1945.50114161

前屈姿勢作業にて、レイボ装着により平均酸素摂取量が7%減となることは、疲労度21%減(生産性21%増)に相当します。

といった内容のデータが公開されています。

アシストスーツを使用することでの腰部負担軽減への効果はしっかりと期待できるかと思います。

動きにくいのでは…

ここで気になるのは、動きを制限されるのではないかという点です。
つまり、アシストスーツを装着して作業をするなかで、動きやすさという点が気になるところではないでしょうか?

実際に、動力なし・サポータータイプでは、生地の伸縮性やゴムの張力によってアシストを発揮するタイプになりますので、サポーターやコルセットを着用した時のような窮屈感が出てくるのは避けられないと思います。

動力なし・外骨格タイプのアシストスーツでも、着用して歩いたりしゃがんだりする際は太腿のパッドが窮屈になるという声があります。

動力あり・外骨格タイプでは、歩行を妨げないような設定が設けられており、しゃがみこんだ姿勢でも太腿パッドの窮屈さはさほど感じません。
動きやすさにおいては、こちらのタイプがもっとも動きの制限が少ないと言えるかと思います。

作業をする人の体格によって、という点については、
あまり小柄な方はそもそも持ち上げ作業に向いていないでしょう。
基本的に非力な方になるでしょうから、どうしても持ち上げ作業をしなければならないのであれば、より小型の動力あり・外骨格タイプを選ぶ方が良いと思います。
大柄な方については、腕力や背筋の力もあると想定できますので、どのアシストスーツを選んでもらってもよろしいかと思います。
最近では、女性が荷役作業をする際の補助としてアシストスーツの導入を検討される企業さんも増えています。
大きな荷物ではないけれども、小型で5㎏ほどの重さで、頻回に持ち上げや運搬をするという軽作業です。
何十回も持ち上げや運搬をするのであれば、アシストスーツの導入はやはり必要かと思います。
女性に優しい職場作りという観点からも、アシストスーツの検討をされてみるのは如何でしょうか?

導入する現場の作業環境に合ったアシストスーツ選びが重要です。動きにくかったりしゃがみにくいといった点が内容に確認しておくことが必要です。
アシストスーツを選ぶ基準にするとともに、このあたりは作業標準として職場でしっかりと教育していく必要があると思っています。

まとめ

まとめると次のような内容になります。

アシストスーツの問題点としては次のような内容が挙げられます。

  1. 費用がかかる
  2. 装着しないといけない
  3. 効果がいまひとつ不明
  4. 使える場面が限定される
  5. 慣れるまでに少し時間が必要な場合も

しかしながら、これらの問題点を上回るだけの利点があるといえるでしょう。

【パワーアシストスーツ導入のベネフィット】
・従業員への健康配慮の取組みが発信できる

・作業員の身体的、精神的負担が減る

〇導入効果は
 ・作業がはかどる
 ・女性の作業支援につながる
 ・購入費用は実はそんなに高くない

作業員の体格や性別、持ち上げる重量や台の高さなど作業をする環境によっても適しているアシストスーツは異なります。
みなさんの作業環境に相応しいアシストスーツ選びのお手伝いができれば何よりです。

アシストスーツ導入活用コンサルタント
作成者:逢坂大輔(理学療法士・作業管理士)

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シーエフロボタスでは、これまでのアシストスーツ導入支援の経験上、
いきなり装着デモをすることはおすすめしていません。
どのような作業内容でアシストスーツを使用し、解消したい課題についてのアウトカムを設定して導入から活用・定着までをスムーズに進めていけるように支援するスタイルをおすすめしています。

アシストスーツをしっかりと使いこなして、そこから得られる作業者のメリット、事業所のメリット、法人全体へのメリットをしっかりとビジョン化してアシストスーツの選定から導入計画の立案、活用から定着までをすすめていきましょう。

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