※この記事は2023年11月24日に最新情報を反映した内容に更新をしています。
パワーアシストスーツの問題点とは?
アシストスーツの導入を検討されている方にとっては大変気になることでしょう。
ここでは、パワーアシストスーツ選びの参考になるよう、問題点と思われる内容を整理していきたいと思います。
当サイトにもよくご相談をいただくのですが、導入検討段階のお客様が抱いているイメージは次のような内容が多いです。
- 費用がかかる
- もうちょっと安くなれば買うかも…
- そもそも装着することが煩わしい
- 暑そう、窮屈そう、動きにくそう…
- ホントに効果があるの?
- 職場で義務化されていないから…
といったお声をよく聞きます。
費用がかかる…
まず、費用がかかる という点については
現在市販されているアシストスーツですが、
当社では次のように分類しています。
- 動力なし・サポータータイプ
- 動力なし・外骨格タイプ
- 動力あり・外骨格タイプ
動力なし・サポータタイプは一着1万円~10万円程度の価格帯で販売されています。
動力なし・外骨格タイプは手に入れやすい価格帯のものも登場しています。一着5万円~50万円あたりというところが中心です。
動力あり・外骨格タイプについては、バッテリーを使用してモーターやセンサーで駆動するタイプになりますのでもう少しお値段が高くなります。50万円以上の価格設定になっています。
機能や耐久性の面でみてみると、
動力なし・サポータータイプは気軽に着用できるのが特徴です。ソフト素材やゴム部分で構成されているので消耗品となる部品類は気軽に交換できるようになっています。また洗濯しやすいというメリットもあり清潔な使い方をしやすい特徴があります。
動力なし・外骨格タイプは、背面に背骨の代わりとなる支柱が入っていたり、空気圧式やガススプリングの動力でアシスト力を発揮するタイプになります。身体の余分な動きを抑えてくれたり、身体の動きに連動してアシストをしてくれます。こちらも製品によってはパーツ類の交換やカバーを取り外して洗濯が可能な製品など、清潔に使える工夫が備わっています。
動力あり・外骨格タイプは使用される部品が多くなるので価格も上昇してしまうのでしょう。その代わり、センサーで身体の動きを検知してモーターのアシストを発揮させますので、身体の動きに合わせたアシストが可能になっています。ハイパワーを求める作業環境の方には電動タイプは特におすすめです。数年は問題なく使用できるでしょう。
もう少し安くなれば買うかも…
年間を通したコスパを考えてみましょう。
最近は、5万円以内で購入できるアシストスーツが増えてきています。
2023年のうちにも各社より新製品がリリースされており、お求めやすい価格帯のアシストスーツが増えてきていると言えるでしょう。
毎日の作業で着用するとすれば、
50,000÷300日(25日×12か月)=166.666… 1日あたり200円以内の計算になります。
毎日使うほどではないよ、というケースでも
50,000÷120日(10日×12か月)=416.666… 500円以内ですね。
これはもう、アシストスーツは十分に手が届く価格帯になってきていると判断できるのではないでしょうか。
購入しやすい価格帯のアシストスーツでもしっかりと身体にフィットし、アシスト感を実感できる製品が増えています。
初めての1着にもピッタリだと思います。
ぜひ最新のアシストスーツを格好よく着こなしてみてください♪
次に、そもそも装着することが煩わしいということですが、確かにそうなのかもしれませんね。
装着することが…
確かに、作業服の上にさらにアシストスーツを着用する。というのはあまり気が進まないかもしれません。
ここ数年で新製品としてリリースされているアシストスーツについては、とくに装着感について非常に工夫して開発されています。
装着するユーザーの体型にしっかりフィットするように作り込まれ、一昔前のアシストスーツの着心地と比べると随分と進化してきています。
ベルト類やサイズについても調整可能なパーツが増えています。これにより、装着者の体型や作業の特性に合わせてサイズやフィット感を自身でカスタマイズできるようになってきています。
自分の体にしっかりとフィットした着用で快適な着用感を実現できるようになっています。
さらに、最新の技術素材を使用したアシストスーツは、軽量かつ通気性があります。
これにより、長時間の着用でも不快感が少なく、通気性が保たれており快適な着用につながっています。
長く装着することって、なんか不安…
アシストスーツ装着の問題点については、いまのところ特にレポートされているものは見つけられていません。
ただ、産業医や整形外科医からは…
- アシストスーツに助けられることで間違った持ち上げ方をする人もいる
- その結果、間違った持ち上げ方でアシストスーツを着ていない場面(仕事・家庭)で無理して痛める
- 持ち上げ動作の正しいポジションをまず身につける必要がある
といった心配の声も聞かれています。
アシストスーツ装着の有無にかかわらず、正しい持ち上げ姿勢や動作を理解しておくことが必要です。
また、海外の研究では、
アシストスーツが筋骨格系にもたらすメリットは、作業者が他の事を考える事によって打ち消される可能性がある。
~オハイオ州立大学・テキサスA&M大学~
「それは本当に悪いパートナーと踊るようなものです」
という報告があります。
<参照>https://www.safetyandhealthmagazine.com/articles/21521-like-dancing-with-a-really-bad-partner-exoskeletons-can-confuse-the-brain-researchers-say
これは、持ち上げ持ち下げ動作の最中に暗算をする課題を与えて、暗算をしている時としていない時の腰にかかる力を測定したリサーチです。
つまり、作業をしながら暗算をするという、二重課題といわれる状況です。
二重課題の状況下では、身体とアシストスーツの一体となった動きにズレが生じていたということです。
ということのようです。
報告者は、「ある程度の知性と仕事の内容をある程度理解した外骨格を使用する必要があります。」と語っています。
二重課題だと動きの追随に脳がついてこない状況になっていると考えることができます。
アシストスーツの習熟度、すなわち慣れがないと、この状況は顕著に出てくるのかもしれません。
そして、作業中は他の事はあまり考えず、集中して作業をする方が良いですね。
腰痛予防対策の導入はこちらをご覧ください
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ホントに効果があるの?
現在各社から効果実証のデータが公開されています。
2023年に発売されたユーピーアール社の最新モデルから最新のデータを見てみましょう。
【サポートジャケットBb+PROⅢ】(動力なし・外骨格)
1.腰椎椎間板に加わる圧力測定値
※10㎏の荷物を床からテーブルに持ち上げる動作にて測定
未装着 | PROⅢ装着 | |
体幹前傾角度の比較 | 66.6度 | 49.1度 |
●サポートジャケット装着時に改善される体幹前傾角度:13.2~17.5度減少
⇒ 瞬間的な負荷圧力の負担が18.3~22.5㎏減少
●同じ作業を100回5日間繰り返した場合の腰椎椎間板への圧力減少効果
⇒ 9,100㎏~11,200㎏(9トン~11トン減少)
※頻繁な作業ほど圧力減少効果の期待大
※モデルを慎重172㎝、体重64㎏と仮定した場合の計算結果。
※検証方法:20~60代健常成人男性10名に重さ10㎏の荷物の上げ下ろしを10回、メトロノームに合わせて10分間に30回、サポートジャケット装着、未装着で実施。
腰痛の発生には、筋肉の過剰な収縮や腰椎椎間板への圧力が高まることで発生リスクが上昇します。
アシストスーツを着用して作業を実施することで、体幹前傾角度を抑えることができ椎間板にかかる負担を軽減することが期待できます。
レイボ社から発表されているデータは、
【レイボエクソスケルトン】(動力なし・外骨格)
※臨床評価による負担軽減率
~オランダ応用科学研究機構およびアムステルダム自由大学の臨床評価~
僧帽筋群 44~50%軽減
脊柱起立筋群 最長筋35~37%軽減
腰腸・胸腸・頚腸肋筋38~44%軽減
※レイボ装着有無による差
~イギリスG’sGlobal社提携農園での農作業にて検証~ 試験環境温度約14℃
平均酸素摂取量 | 最高酸素摂取量 | 最大酸素摂取量 | 平均心拍数 | 最大心拍数 | |
レイボ未装着 | 14.26 | 23.98 | 45.50 | 131 | 178 |
レイボ装着 | 13.27 | 23.19 | 45.50 | 114 | 161 |
前屈姿勢作業にて、レイボ装着により平均酸素摂取量が7%減となることは、疲労度21%減(生産性21%増)に相当します。
といった内容のデータが公開されています。
このような検証データからも、もうアシストスーツを装着して作業をすることは腰への負担軽減にしっかりと効果が感じられると言えるでしょう。
腰用アシストスーツは、重い物を扱う仕事や複雑な動作が求められる職場での安全性向上に大いに期待が持てます。
動きにくいのでは…
ここで気になるのは、動きを制限されるのではないかという点です。
つまり、アシストスーツを装着して作業をするなかで、動きにくくなるのでは、という点が気になるところではないでしょうか?
実際に、作業着の上にアシストスーツを着用するので少しの窮屈感は否めないかもしれません。
アシストスーツのタイプによっては、運搬などの移動が窮屈に感じたりしゃがみにくいといった声も聞かれています。
これはアシストスーツを使用する作業内容が影響していることが考えられます。
アシストスーツは重量物持上げや荷下ろし、中腰姿勢などといったあまり移動を伴わない繰り返し作業に最も効果を感じることができるでしょう。
持ち運びの移動距離や階段の上り下りが必要な作業ではかえって動きを妨げてしまうかもしれません。
各アシストスーツの特徴を知って、動きを妨げにくいアシストスーツを選んでいくことが必要です。
最新のアシストスーツ情報や製品特徴はこちらをご覧ください
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最近では、女性が荷役作業をする際の補助としてアシストスーツの導入を検討される企業さんも増えています。
大きな荷物ではないけれども、小型で5㎏ほどの重さで、頻回に持ち上げや運搬をするという軽作業です。
何十回も持ち上げや運搬をするのであれば、アシストスーツの導入はやはり必要かと思います。
女性に優しい職場作りという観点からも、アシストスーツの検討をされてみるのは如何でしょうか?
導入する現場の作業環境に合ったアシストスーツ選びが重要です。動きにくかったりしゃがみにくいといった点が内容に確認しておくことが必要です。
アシストスーツを選ぶ基準にするとともに、このあたりは作業標準として職場でしっかりと教育していく必要があると思っています。
職場で義務化されていないから…
いまから40年ほど前は、ヘルメットをかぶらずにバイクに乗ることが当たり前でした。
1986年に原付を含むすべてのバイクに乗車する際のヘルメット着用が義務化されたのです。
いま、ヘルメットをかぶらずにバイクに乗ることなんて、考えただけでも恐ろしいですよね。
でもそれが普通だったんです。
これは、腰を守るアシストスーツにも当てはまるのではないかと思っています。
腰を守ることをせずに重量物を運搬することで腰を痛める危険性が高くなることは良く知られています。
腰痛による自身への損失や、所属する会社の損失をできるだけ防いでいきましょう!
アシストスーツを装着して持ち上げ作業を行う作業環境が当たり前になるように、自分の身体を守るためにもアシストスーツを装着する煩わしさ感じて欲しくないと思います。
まとめ
まとめると次のような内容になります。
アシストスーツの問題点としては次のような内容が挙げられます。
- 費用がかかる
- 高価なイメージ
- 装着しなければいけない
- ホントに効果ある?
- はじめの一歩が踏み切れない
しかしながら、アシストスーツの導入企業が増えており、わざわざ着るだけの理由は大いにあるようです。
当サイトで受けたこれまでの適用相談から導入経緯を振り返っても、これらの問題点を上回るだけの利点があるでしょう。
・従業員への健康配慮の取組みが発信できる
・腰を守る作業手順の意識づけが高まる
・作業員の身体的、精神的負担が減る
〇導入効果は
・腰痛リスクが減らせる
・作業がはかどる
・女性や年配作業員の作業支援につながる
・購入費用は実はそんなに高くない
作業員の体格や性別、持ち上げる重量や台の高さなど作業をする環境によっても適しているアシストスーツは異なります。
みなさんの作業環境に相応しいアシストスーツ選びのお手伝いができれば何よりです。
作成者:逢坂大輔(理学療法士・作業管理士)
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